1998年12月22日に、1996年製トラックを運転中、車線に
他の車が入ってきたため衝突を避けようとして、車が制
御できなくなり、ガードレールに激突した。この時に、
トラックの運転手席のエアバックは作動しなかったため、
運転者はハンドルに頭をぶつけ、負傷した。
本件についてこの運転者は、エアバッグがマニュアル
に記載されている「明示の担保責任」を満たしておらず、
非合理的な危険があるとしてトラックを製造した自動車
メーカーを訴えた。
1996年製の当該トラックのオーナーズマニュアルには、
以下のような一節があった。
「いつエアバッグは作動するか
エアバッグは激しい正面あるいはほぼ正面からの衝突
の衝撃を緩和するために作動するように設計されている。
エアバッグは車のスピードがシステム上設定されている
反応レベルを超えた場合にのみ作動する。車が動いたり
変形しない壁にまっすぐぶつかった場合の反応レベルは
時速14マイルから18マイルになっている。しかし、車の
特殊なデザインによって反応レベルは変わることがあり、
この範囲以上あるいは以下にもなりうる。」
これに対し、第1審のルイジアナ州東地区連邦地方裁判
所は、「明示の担保責任」に反しているとは認定できない
として、原告の訴えを棄却した。原告は控訴した。
本件について、第5巡回区控訴裁判所は、1月2日、ルイ
ジアナ州の製造物責任法の「明確な規定」に従えば、マニ
ュアルの記載は「明示の担保責任」をなしていると結論付
けられるとして、被告勝訴判決を破棄した。
第1審は「今回の衝突において作動しなかったことについ
て、当初の設計に鑑みればエアバッグの機能に不適切な点
はない」としていた。これに対し第5巡回区控訴裁判所は、
「エアバッグが設計通りの機能であるから担保責任を満た
していると結論づけたことに誤りがある」とした。その上
で、エアバッグが設計されたとおりに作動するかより、むし
ろエアバッグの性能が保証文言に合致しているかどうかに焦
点を置くべきであったとした。
さらに、第5巡回区控訴裁判所は、「原告が提出した証拠等
から判断すると、合理的な陪審であれば、①原告は保証文言
を見てトラックを使用するようになったこと、②製品はその
保証内容を満たしていないこと、③保証内容が正しくなかっ
たために、原告は負傷したことを認定しえた」と述べた。
(注)明示の担保責任(express warranty)
文言や言語で明確に表明された品質についての保証のことを
いう。アメリカ法では、契約条項に限らず、売買の目的物に
ついての説明や見本も取引の基礎の一部をなすのであれば、
明示の担保とされる。また、物品に関する陳述や表示は、
供給者と契約関係のない当事者がこれを信頼した場合、
明示の担保と認定される場合がある。
ここがポイント
第1審陪審が、エアバッグが開かなかったことについて、
設計した機能どおりであったことを重視して、被告勝訴と
判断したのに対し、第2審は開かなかったこと自体はたと
え設計した機能通りであったとしても、マニュアルに記載
された作動条件を満たした状況で事故が起きている以上、
メーカーとしてはエアバッグの機能の如何に関わらず、作
動しなかったことに対し責任を負うと判断しています。
このように米国では明示の担保責任の理論に基づき損害賠
償請求されることが少なくありませんが、ディフェンスに
際しては、単に明示の担保責任を満たしているか否かとい
う観点からのみならず、本質的に要求される機能を満たし
ているか、という観点からも十分に検証した上で戦略を検
討しておかなければなりません。
全国47都道府県、企業向け損害保険相談取り扱い件数16,235件(平成30年)
労災・賠償保険の年間平均相談受付件数、400件超
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大手損害保険会社・営業・事故処理業務等、広く従事。
外資系大手生命保険会社にて、生命保険集中研修。
専門課程取得ライフコンサルタント認定(9900389340)
損害保険特級(一般)資格取得
変額保険資格
証券2級外務員資格・特級損害調査資格取得
厚生労働省ファイナンシャルプランナー技能士認定(F20210644108号)
全国MVPタイトルを2種目で獲得。
主席にて保険会社退社後、
有限会社東京リスクマネジメント設立
AFP資格取得、特定非営利活動法人日本ファイナンシャルプランナーズ協会加盟(No.39422473)
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