フロリダ州在住の3人家族の一家が、自家用車に乗って道路を走行中に、
後部右タイヤのトレッド(タイヤの接地面)が剥がれるアクシデントが発生した。
車を運転していた父親は、道路のセンターライン付近で動かなくなった
自家用車を路肩に移動させようとしていたところ、自家用車の存在に
気づくのがおくれたトラックがこの車に追突し、その結果車の中にいた
女児が死亡し、車外にいた両親も大ケガを負った。
この交通事故の現場検証において、警察署の係員は現場の写真撮影を
行っており、その中には、問題のタイヤから剥がれたトレッドが収められて
いた写真があったものの、事故処理の過程において、剥がれたトレッドの
行方がわからなくなってしまい、被害者/タイヤメーカー双方ともに、トレッド
の現物を回収することができなかった。
本件事故の被害者である両親は、問題のタイヤを製造したメーカーを相手取り、
損害賠償を求めてフロリダ州地裁に提訴した。
これに対し被告は、証拠の隠滅を根拠として、下記の主張を行い、
サマリージャッジメント(注1)の申立を行った。
・問題のトレッドが紛失してしまっている状況において、タイヤに欠陥が
存在したかどうかの判断は不可能である。
・自社としては、重要な証拠であるトレッドの調査ができず、欠陥の
不存在の証明が不可能となったことから、ディフェンス対応上明らかに
不利な立場に置かれている。よってサマリージャッジメントの申立は認めら
れるべきである。
併せて被告は、「現場に残存したタイヤを調査した結果によれば、
走行中タイヤがパンクしたにもかかわらず、原告がその後も長時間運転
しつづけたことがトレッド剥離の原因である。」
とする内容の、自社従業員による宣誓供述書(注2)を提出した。
一審はサマリージャッジメントの申立を認容し、原告を敗訴させた。原告は
これを不服とし、フロリダ州控訴裁判所へ控訴した。
控訴審において、裁判所は、
・証拠の隠滅を根拠とするサマリージャッジメントの申立が認められるため
には、対象となる証拠を訴訟の当事者が保管していることが前提
となる。
・本件においては、原告又は原告の訴訟代理人が、事故の後、問題
のトレッドを自己の管理下で保管していなかった事実については争いの
余地がない。よって被告の主張を認容した一審の判断は誤っている。
と判断した上で、「被告が提出した宣誓供述書の内容からすれば、
被告は本件訴訟に関するディフェンス対応の準備は可能であり、トレッドの
紛失により、被告が訴訟遂行上明らかに不利な立場に追い込まれた
とまではいえない」と述べ、被告の主張を斥け、審理を原審に差し
戻した。
(注1)サマリージャッジメント(略式判決)
一方当事者の証拠が明らかに不十分であったり、事件の重要な事実について
真の争点がないような場合に、審理の迅速化の観点から、陪審判断にかける
ことなく裁判所が下す判決をサマリージャッジメントという。
(注2)宣誓供述書
供述者が法廷外で自発的に自己の知覚した事実を書き記した供述書で、宣誓
させる権限を有する者の面前で、記載内容が真実であることを、供述者が宣誓
(oath)または確約(affirmation)した上で署名したものを指す。
ここがポイント
本件では、1審において、重要証拠であるトレッドの紛失によりディフェンス上不利
であることを主な根拠として、被告メーカーによるサマリージャジメントの申立が認容された
ものの、控訴審では被告メーカーに必ずしも不利とはいえないとして覆されています。
サマリージャッジメントの申立そのものは、これが認められれば訴訟に関するコストや対
応ロードの軽減につながることになるため、企業にとってはそれなりの意義がある
といえますが、本事案のように一審で認められても控訴審で差し戻しとなる可能
性もあります。
本件に関していえば、一審に差し戻し後は、被告メーカーの宣誓供述書の内容を
ベースに審理が展開されることが予想されることから、被告メーカーとしては、この
ような展開を見越した上で、サマリージャジメントの申立後に宣誓供述書で主張する内容
を、予め慎重に吟味しておくことが必要となります。
全国47都道府県、企業向け損害保険相談取り扱い件数16,235件(平成30年)
労災・賠償保険の年間平均相談受付件数、400件超
損害保険事故処理件数年間平均90件超
現在、インターネット販売による企業向け損害保険相談にて、多くの取り扱い件数を誇る。
大手損害保険会社・営業・事故処理業務等、広く従事。
外資系大手生命保険会社にて、生命保険集中研修。
専門課程取得ライフコンサルタント認定(9900389340)
損害保険特級(一般)資格取得
変額保険資格
証券2級外務員資格・特級損害調査資格取得
厚生労働省ファイナンシャルプランナー技能士認定(F20210644108号)
全国MVPタイトルを2種目で獲得。
主席にて保険会社退社後、
有限会社東京リスクマネジメント設立
AFP資格取得、特定非営利活動法人日本ファイナンシャルプランナーズ協会加盟(No.39422473)
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