持ち運びの可能な簡易型ベビーベッドに寝かされていた
幼児がベッドの柵に首をはさまれて窒息死した事故を巡
るPL訴訟で、昨年12月、原告の被告メーカーとの間で和解が
成立した。和解額は300万ドルで、子供用製品に関するPL
訴訟の和解事例の中でも大型案件の1つとされている。
1998年5月、イリノイ州在住の夫婦が1才6ヶ月の子供を託児
所に預けた。託児所の職員がこの子供をA社製造の簡易
型ベビーベッドに寝かせてその場を離れ、しばらくして戻
ってみると、子供が窒息死しているのが発見された。事
故当時、このベビーベッドが折り畳まれた状態となっており、
子供の首がベッドの柵にはさまれてしまったことが死亡
につながったものであった。
子供の両親は、問題のベビーベッドを製造したA社を相手
取り、損害賠償を求めてイリノイ州地裁に提訴した。訴えの
中で原告は、○問題のベビーベッドは、使用中に突然折り
畳まれてしまうことがあるという点で、設計上不相当に
危険なものであり、開発時における市場調査や製品テストも
不十分であった。
○今回以外にも過去10年間に同様の事故で6人の幼児が
死亡していることからも上記の点を裏付けるものである、
などと主張した。さらに当該ベビーベッドについては、
事故発生の5年前に、メーカーによってリコールが実施されてい
たことが裁判の過程で判明した。これは5年前当時、
死亡事故が3件相次いだ事態を重く見て実施されたもの
であったが、回収できたのは当時市場に出回っていた
約12,000台のうちの1/4にとどまるものであった。さら
に本件事故が社会的に知られるようになったことを受け、
被告が2回目のリコールを実施したものの、回収率はわずか
数%向上したにすぎなかった。
本訴訟については、提訴後に何度も和解による解決が
試みられたものの、原告側が和解内容を非公開とする
ことに強い難色を示し続けたため、陪審審理による決着
が図られることが確実視されていた。その後、陪審審理
に移行する直前になって、裁判官の勧告もあり、最終的
に和解内容を公開することを条件に両者が和解に応じる
こととなった。この結果、和解金額が約300万ドルである
ことが明らかとなったことに加え、原告が裁判手続の中
で被告メーカーから収集した証拠や証言記録なども公開され
ることになった。
本件について原告側弁護士は、「我々の目的は被告
メーカーの恥ずべき行為を検証し、光を充てることにある。
我々が今回の訴訟で得た情報をもとに、子供用製品の安
全性がより一層高まることを望むものである」とコメントし
ている。
ここがポイント
最終的に和解による解決が図られたものの、被告メーカーと
して和解内容を公開すべしとの原告側主張を受け入れて
いる点で、実質的に被告メーカーが敗訴したものと同視でき
る事案であると考えられます。
本ベビーベッドについては、折り畳んでの持ち運びが可能
であったことから利便性という点では有用であったかも
しれませんが、原告の主張内容通りに、ベビーベッドがひ
とりでに折り畳まれてしまうという問題点があったとす
れば、危険性が有用性を上回ることは明らかであるとい
えます。
このため、例えば、設計上折り畳み防止用ストッパーなどの
追加防護措置を講じた上で、ストッパーの使用に関する指示
警告を適切に行うなど、安全性確保のための様々な対策
を組み合わせながらリスクを低減させ、常に危険性が有用性
を上回っていないかどうかの観点から安全性の検証を行う
姿勢を保つことが大切です。
なお、今回の事故については、問題の製品が被告メーカーによ
るリコール対象製品であったことや、回収率の低さなどが原告
側から指摘されています。一般にリコールを実施する場合、製
品の流通経路やトレーサビリティのレベルなどを勘案しながら、回
収目標を決定しますが、回収率が目標を大幅に下回るよう
な場合には、通知方法(通知先、通知手段、通知回数・通
知期間)に問題がないかどうかを、市場調査等を通じて検
証の上、追加措置を講じることが必要です。
全国47都道府県、企業向け損害保険相談取り扱い件数16,235件(平成30年)
労災・賠償保険の年間平均相談受付件数、400件超
損害保険事故処理件数年間平均90件超
現在、インターネット販売による企業向け損害保険相談にて、多くの取り扱い件数を誇る。
大手損害保険会社・営業・事故処理業務等、広く従事。
外資系大手生命保険会社にて、生命保険集中研修。
専門課程取得ライフコンサルタント認定(9900389340)
損害保険特級(一般)資格取得
変額保険資格
証券2級外務員資格・特級損害調査資格取得
厚生労働省ファイナンシャルプランナー技能士認定(F20210644108号)
全国MVPタイトルを2種目で獲得。
主席にて保険会社退社後、
有限会社東京リスクマネジメント設立
AFP資格取得、特定非営利活動法人日本ファイナンシャルプランナーズ協会加盟(No.39422473)
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