1996年製トラックを運転中、車線に他の車が入って
きたため衝突を避けようとして、車が制御できなく
なり、ガードレールに激突した。この時に、トラック
の運転手席のエアバックは作動しなかったため、運転
者はハンドルに頭をぶつけ、負傷した。
本件についてこの運転者は、エアバッグがマニュアル
に記載されている「明示の担保責任」を満たしておらず、
非合理的な危険があるとしてトラックを製造した自動車
メーカーを訴えた。
1996年製の当該トラックのオーナーズマニュアルには、
以下のような一節があった。
「いつエアバッグは作動するか
エアバッグは激しい正面あるいはほぼ正面からの衝突の
衝撃を緩和するために作動するように設計されている。
エアバッグは車のスピードがシステム上設定されている
反応レベルを超えた場合にのみ作動する。車が動いたり
変形しない壁にまっすぐぶつかった場合の反応レベルは
時速14マイルから18マイルになっている。しかし、車の
特殊なデザインによって反応レベルは変わることがあり、
この範囲以上あるいは以下にもなりうる。」
これに対し、第1審のルイジアナ州東地区連邦地方裁判所は、
「明示の担保責任」に反しているとは認定できないとして、
原告の訴えを棄却した。原告は控訴した。
本件について、第5巡回区控訴裁判所は、1月2日、ルイジ
アナ州の製造物責任法の「明確な規定」に従えば、マニュ
アルの記載は「明示の担保責任」をなしていると結論付け
られるとして、被告勝訴判決を破棄した。
第1審は「今回の衝突において作動しなかったことについ
て、当初の設計に鑑みればエアバッグの機能に不適切な点は
ない」としていた。これに対し第5巡回区控訴裁判所は、
「エアバッグが設計通りの機能であるから担保責任を満たし
ていると結論づけたことに誤りがある」とした。その上で、
エアバッグが設計されたとおりに作動するかより、むしろエ
アバッグの性能が保証文言に合致しているかどうかに焦点を
置くべきであったとした。
さらに、第5巡回区控訴裁判所は、「原告が提出した証拠
等から判断すると、合理的な陪審であれば、①原告は保証文
言を見てトラックを使用するようになったこと、②製品はそ
の保証内容を満たしていないこと、③保証内容が正しくなか
ったために、原告は負傷したことを認定しえた」と述べた。
(注)明示の担保責任(express warranty)
文言や言語で明確に表明された品質についての保証
のことをいう。アメリカ法では、契約条項に限らず、
売買の目的物についての説明や見本も取引の基礎の
一部をなすのであれば、明示の担保とされる。また、
物品に関する陳述や表示は、供給者と契約関係のな
い当事者がこれを信頼した場合、明示の担保と認定
される場合がある。
ここがポイント
第1審陪審が、エアバッグが開かなかったことについて、
設計した機能どおりであったことを重視して、被告勝訴
と判断したのに対し、第2審は開かなかったこと自体は
たとえ設計した機能通りであったとしても、マニュアル
に記載された作動条件を満たした状況で事故が起きてい
る以上、メーカーとしてはエアバッグの機能の如何に関
わらず、作動しなかったことに対し責任を負うと判断し
ています。
このように米国では明示の担保責任の理論に基づき損害
賠償請求されることが少なくありませんが、ディフェン
スに際しては、単に明示の担保責任を満たしているか否
かという観点からのみならず、本質的に要求される機能
を満たしているか、という観点からも十分に検証した上
で戦略を検討しておかなければなりません。
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大手損害保険会社・営業・事故処理業務等、広く従事。
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損害保険特級(一般)資格取得
変額保険資格
証券2級外務員資格・特級損害調査資格取得
厚生労働省ファイナンシャルプランナー技能士認定(F20210644108号)
全国MVPタイトルを2種目で獲得。
主席にて保険会社退社後、
有限会社東京リスクマネジメント設立
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